「金剛。」
「おっ螺呪羅、時間通りだな。」
待ち合わせ場所に現れたそいつは、意外にもカジュアルスーツに身を包んで現れた。
「似合うじゃん。」
「そうか?」と、嬉しそうに微笑む。
今日は、二人で夕飯を食べる事になっているんだ。
「さあ、さっそく行きますか。何か食いたいのあるか?」
「こっちの事はよくわからないからな・・・金剛のお薦めを周りたいかな。」
「そうか。じゃ、俺についてこい!腹一杯食わせてやるよ!」
「なんだ。結構少食なんだな。」
3軒目辺りから食べるペースの遅くなった螺呪羅に声をかけた。
「うむ・・・。そんな事は無いと思うんだが・・・。
・・・そろそろ膨れてきたかもな。」
「そうかぁ。じゃ、そろそろ帰るか?」
「金剛はまだ足りないんじゃないのか?付き合うぞ。」
「えっ、いいよ、悪いし。」
そういうと、螺呪羅は少し寂しそうな顔をして、
「お前のものを食べてるところを見てると、こちらも幸せな気分になる。」
なんて言うから
「そうか?それじゃ、もう一軒付き合ってもらうかな。」
と、つい言ってしまう。
そんな感じの顔をたまに見せるんだ。こいつは。
「金剛?ここに食事所があるのか?」
もう一軒。といいつつ公園を散歩し始めたので、少しいぶかしんだらしい。
「まあ、いいじゃねぇか。腹ごなしに歩くのも。」
そして、他愛も無いことを話しながら公園内を巡り、中央辺りにあるベンチに奴を座らせて、俺はその
場を離れた。
−−−
金剛に連れられて公園を歩いてる間からずっと、俺は悶々としている。
もう、夜も更けて園内は恋人同士と思われる者がたくさんいるのだ。
これは・・・・・・・、誘っているんじゃないだろうか・・・・・?
ひょっとして、肩を抱いても・・・いや、腰くらい・・・・いや、やっぱ。手かな・・・・・?とか考えてたら、椅
子に座らされてしまい、金剛は闇へと消えた。
・・・・。
・・・・・・。
下心が見え見えだったんだろうか・・・?
先ほどまでとは別の意味で、悶々とし始めてしまった。
−−−
「螺呪羅、具合悪いのか?」
俺が戻ってきたら、何やら頭を抱えているので心配になってしまった。
顔を上げた奴は、俺の顔を見ると安心したようにというか、ほっとしたように微笑んだ。寂しかったんだ
ろうか?
「ほら、これ。うまいんだぜ。」
「これは・・・?」
「たこ焼き。知らないのか?」
俺は、まずひとつ頬張り、続けて突き刺したそれを、螺呪羅の口ん中に押し込んでやった。
「熱っ。」ちょっと涙目になりながらもぐもぐやってる螺呪羅は、なんかちょっとかわいかった。
へへっと浮かれながら、俺は今日の礼を言う。
「今日は、付き合ってくれてありがとな。楽しかったぜ。」
「ひあ・・・。」答えようとしてまともな言葉の出てこない螺呪羅に、重ねて言う。
「また、一緒に飯、食おうぜ。」
そして、俺達は、別れた。
次会う約束をきっちり交わして。
終
特にオチは無いです。
すみません。