夕餉の時分、互いの一日の報告も兼ねてこうして律儀に4人揃って食事などをしているわけだ
が、事務的な報告や厭味や沈黙を持ってのみでしか話のできない連中と和やかな会食など望め
るはずもなく、ただもくもくと少々熱すぎる味噌汁など飲みながら周りの様子を見ていた俺は
、ふと、隣の那唖挫の様子に気付いた。
微かに眉根を顰めながら、口の中に指を入れている。
その白い指と紅い口の中が妙に艶かしく見えてしばし恍惚と見惚れていたのだが、
「どうした?那唖挫?」
と朱天がかけた声ではたと我に返りもう一口慌てて味噌汁を飲み、迂闊にも口内を


「味噌汁で火傷した。」

思考が耳に届いて驚いた。
「はは、間抜けだな。」と螺呪羅が言い、「気を付けろ。」と朱天が言う。
ふむ。と、今一度口の中を探索しようとする那唖挫を見て、自分の火傷の方が疼くのを感じた

「那唖挫。」声をかけると訝しげに顔を傾けながらこちらを見た那唖挫の顎をついと掴み、先
ほどまで執拗に触っていた辺りを舐めてみた。
僅かに違和感を感じる皮膚を捜しつつ相手の口内をうっとりと楽しむ。
直接、火傷部分に舌先が触れると、痛みがあるのか体が微かに強張った。
朱天が飲んでいたお茶を噴出し、螺呪羅が驚いたように目を見張るのを感じた。
肩を押されるように、体を離されたので、「火傷なんて唾つけときゃ、治るさ。」と言ってみ
た。さりげなく言ったように聞こえただろうか?
そっと顔色を伺うと案の定苦々しげな顔をして、
「自前のがたくさんあるわ。」
吐き捨てるように言われたので、苦笑しつつ「遠慮するな。」と言ってみた。



「悪奴弥守。」
部屋の前で声をかけられた。
「うまくやったな。」とにやにや笑っている螺呪羅に鼻で笑って「何のことだか。」と言って
やった。
そうか。と相変わらずにやけた顔をしている相手がふと気付いたような顔をして、
「悪奴弥守?」ともう一度呼ぶから「何・・・?」と言いかけたら口を塞がれた。
探るように弄ぶように口内を巡っていたそれは、やがて、火傷の部分に到達する。
「・・・はっ」
苦労してようやく相手の体を離した時には、すっかり息が切れてしまった。
「火傷は、舐めるといいんだろう?」
くつくつと笑いながら俺の繰り出した拳を避けて、「ゆっくり休め。」と言いながら自分の部
屋の方へ戻っていく螺呪羅を見て、俺はため息をついた。

一勝一敗・・・?

そんな的外れ言葉が、脳裏に浮かんで情けなくなった。






闇毒で幻闇。
初トルーパー小説?
中学の頃、書いてたっけ?
ラジさんがあれで帰るとも思えないんだけど、まぁいいか・・・。

『食事時』