那唖挫が庭でしゃがんでいる。
具合が悪そうでもないし、花でも愛でてるのだろうか?
珍しい事もあるもんだと思い、声をかけてみた。
「何か、珍しい花でも咲いてるのか?」
無視された。
「おい、聞こえてんだろうが!何か言えよ!」
「落ち着け。そうがなるな。耳が痛くなる。」
そういうヤツだと知ってはいるが、それで俺がカッとなるのもコイツは知ってるはずなのに、
どうしてこうなのか!
「お前なぁっ・・・・?」
こちらを向かせようと肩に手をかけたところで、地面の様子に気がついた。
花なんかなかった。そこには、
「蟻・・・・?」
大量に死んでいた。
ひとつ唾を飲み込み、聞いてみる。
「なぁ、那唖挫・・・・・?」
「昨日、毒を少しこぼしたんだ。」
それで状況を全て説明したような顔をしているので、もう一度聞く。
「なんでそんなもん見てるんだ?」
面倒くさそうに俺を見てから
「初めは数匹だったが、それを運ぼうとした蟻が途中で力尽きた。
その蟻を運ぼうとした蟻も途中で動かなくなった。
伝染してるんだ。毒が。」
心なしか楽しそうに話す。
「どこまで伝染するのか、興味がある。」
それきり、また黙ってしまった。
「そうか・・・・。」
すっかり毒気を抜かれてしまって、間の抜けた返事を返してしまった。
後ずさりをするようにそっとその場から離れる。
少し寂しくなりながら、部屋に戻ろうと歩き始めた時、
「悪奴弥守、手、洗っておけよ。」
え?と思い、振り返る。
相変わらず下を凝視しつつ那唖挫は言葉を続ける。
「同じ毒が、俺の服にも染み付いてるからな。おそらく。」
さっと、血の気が引いた。
「お、お前はっ?お前は平気そうじゃないか!?」
ふふん。とちらとこっちを見たと思うと、その薄い唇はのたまう。
「俺は、毒魔将だぞ?闇魔将殿。」
きびすを返して俺は、手洗い場に向かい走った。
ちくしょう。
花を愛でてるなんて愛いヤツ。とか思ったのが馬鹿だった!
ああ、ちくしょう!
走り去った悪奴弥守を見送り、那唖挫は一人そっとつぶやく。
「冗談だ・・・・。」
=終わり=
仲良さげなふたりをば、ひとつ。
いいね。仲良さげ。